雨のち、笑顔。放課後等デイサービス「らびっつ」と過ごした、少し特別なキャンプの1コマ

ずっと楽しみにしていた、6月の週末。 けれど、窓の外はあいにくの激しい雨模様。
コミュニティビレッジきとなる(以下「きとなる」)に集まったのは、放課後等デイサービス「らびっつ」が企画した1泊2日の「きとなるキャンプ」に参加する、小学5年生から中学3年生までの子どもたち9名です。そのうち4人は「今年も絶対に行きたい!」と手を挙げてくれた去年のリピーター、そして5人はドキドキしながら足を運んでくれた初参加のメンバーでした。

大人でも予定通りにいかなくてソワソワしてしまうような雨のなか、オープニングでスタッフの大沢さんが投げかけたのは、少し意外な話でした。

いつもと違う環境、思い通りにいかない天気。キャンプは楽しいだけではなく、子どもたちにとってプレッシャーやストレスがかかる場面もたくさんあります。だからこそ、自分の感情とどう向き合うか。それを体験のなかで学んでほしい。そんな願いから、らびっつのキャンプは幕を開けました。

 

🥕「あえて、やらせてみる」その先にある自立への願い

最初のオリエンテーションを終えて、時計の針は15時前。外の雨は強まるばかりです。
「予報では4時過ぎに雨が和らぐみたいだから、テント張りは後回し!予定を変更して、まずは室内でカレーの準備をはじめます!」

キャンプに予定変更はつきもの。子どもたちはスタッフの永井さんが作ってくれた手順書をじっくり見つめながら、キッチンへと移動しました。

 

慣れない調理場、そして手にする包丁。「これ切りたい!」「皮むきたい!」と積極的に手を挙げる子、手持ち無沙汰な子にスタッフがそっと寄り添うなか、見ている大人のほうが思わず「危ない!」と手を出しそうになるハプニング満載の場面もありました。

ハラハラしながらも、スタッフはぐっとこらえ、あえて子どもたちの「やってみたい」に委ねます。そこまでして、大人が「あえてやらせてみる」のには、どんな思いがあるのでしょうか。キャンプをメイン担当として引っ張るスタッフの永井さんに尋ねてみました。

「家では危なくてそこまでやらせないかもしれない。でも、自分で見て、確認して、やってみるという経験が大切なんです。最終的に大人になったとき、誰か他人と関わりあいながら生活することを考えたら、やっぱり『自分でできること』が多いほうが強い。それは、おうちの方の安心にもつながると思うんです」

とはいえ、人によって「さじ加減」にはばらつきがあるもの。それでもらびっつでは「ちょっと今、手を出しすぎたかも!」「ここは臨機応変にいこう」とお互いにフラットに指摘し合いながら、子どもたちにとって最適な見守りの距離感を試行錯誤しています。

 

 

子どもたち一人ひとりの挑戦を応援しながら、大人たちが手に汗握るハラハラ感を乗り越えて、自分たちの手で見事に作り上げたカレー。おいしそうな香りが部屋いっぱいに広がる頃、外の雨もようやくあがり始めました。

 

 

班長たちが見せた頼もしさ

いよいよキャンプは外での活動へ。濡れた芝生の匂いのなか、テント設営にチャレンジ。時間はかかりながらも、2班ともなんとか無事にテントを立てることができました。

 

今回、1班の班長に指名されたのは、他事業所からの参加で、リピート参加のTさんです。

思い返せば去年のキャンプ。仲が良いゆえにお互いのわがままがぶつかり合い、大混乱に陥った一幕がありました。いつもは絶対に泣かないタイプの子がポロポロと涙をこぼすほどの大きな衝突。それでも最後は、子どもたち自身が「このままでは帰れない」と涙を拭い、お互いに「ごめんね」と言い合って乗り越えた、濃密な1年目の経験がありました。

「去年の衝突のきっかけは、何をしていいか分からずウロウロしてしまったTさんでした。でも、彼の通う学校の運動会をみんなで見に行ったとき、気づいたんです。『あ、Tさんは役割があったら、こんなに立派に頑張れるタイプなんだ』って」(永井さん)

普段は「らびっつ」の利用者ではないTさん。それでも、彼の日常から垣間見えた“強み”を信じ、今年はあえて「班長」という大役を任せることにしました。

 

 

一方、2班の班長を務めたのは、中学3年生のYさん。実は、昨年悔しくて涙を流した張本人の一人でもあります。2回目となる今回のキャンプ、班長としての感想を尋ねると、驚くほど頼もしい答えが返ってきました。

「テントを立てたりするのが去年よりも簡単に感じた。みんなで協力できたのは、メンバーが素早く動いてくれたから。」

 

 

夜は「テントの中がムシムシして、暑くてなかなか寝られなかった」というキャンプの洗礼(?)も受けつつ、見事にメンバーと協力したYさん。清々しい表情が印象的でした。

 

🤝 子どもも大人も「共に育つ」場所

 

2日目の朝、まだ眠い目をこすりながらも、みんなで朝ごはん作りに挑戦。ホットサンドやスープをおいしく食べたあと、スタッフが声をかける前に、1人の子が「自分の使ったお皿を片付けます」とキッチンへ食器を持ってきました。それを見た周りの子どもたちも「僕も!」「私も!」と続々とキッチンへ。

その後のテントの撤収作業でも、もっと時間がかかるかと思いきや、2人一組になって「これ持って」「あっちに戻そう」と声を掛け合い、驚くほど早く片付けを終えることができました。

 

 

最後の振り返りタイムでは、子どもたちからたくさんの「できた!」が溢れ出しました。 「初めてテントを立てられた!」「1人で寝られた!」 初めは不安そうな表情を見せていた初参加の子どもたちも、自分の力でやり遂げたことで、最後は驚くほど誇らしげで、やりきった表情を浮かべていました。

1班の班長を務めたTさんも、「〇〇さんがお料理が上手だった」「またお友達と仲良くしたい」と、みんなの前で堂々と感想を発表。そして2班の班長・Yさんは、「本当にいいチームだった! 今回は全然イライラしなかった!」と、晴れやかな笑顔を見せてくれました。

 

 

「こういう場だからこそ、日常では見えないその子の『得意なこと』が見えてくる。今回もそれぞれの成長やいつもと違う頼もしい一面が見えて、成長を感じました」(永井さん)

そんな成長の眼差しは、子どもたちだけでなくスタッフ自身にも向けられています。

「普段の業務とは違うこのイベントは、スタッフにとっても新鮮で、成長できる挑戦の場です。日頃はどうしても子どもの『苦手なこと』『できないこと』に目が行きがちになってしまう。せっかくのキャンプを『怒られて終わる場所』にするのではなく、『あれもこれもできるようになったね!』と、子どもも、親も、職員も、みんながポジティブに振り返れるイベントにしていきたい。これからももっといい場にアップデートしていきたいです」(永井さん)

 

 

🌳 柵のない「きとなる」だからこそ、生まれるコミュニケーション

 

1泊2日の締めくくりに、大沢さんは子どもたちへ向けてエールを贈りました。

「初めてのことや新しいことにチャレンジするときは、これからもたくさんあると思う。でも、周りの人、特に大人に『手伝ってほしい』『困っている』と自分から発信すれば、絶対になんとかなる。昨日と今日の経験を自信にして、これからも学校や家庭でがんばっていってください!」

最後は、みんなで協力して片付けたテントの前に立ち、空の下で、最高の笑顔で集合写真をパシャリ!少し疲れの見え隠れする、でもそれ以上に晴れやかな子どもたちの笑顔。そこからは、キャンプという非日常のなかで「雨でもなんとかなった!」「自分たちの力でいいチームを作れた!」という大きな成功体験と、ひと回りたくましくなった自信が真っ直ぐに伝わってきました。

 

 

「福祉施設は、安全や配慮を理由に柵で囲われるなど、どこか閉鎖的になりがちです。しかし『きとなる』には、境界線となる柵がありません。そんなここ『きとなる』の里山だからこそ生まれる、豊かな関わり合いがあると思うんです」

永井さんは最後にそう話してくれました。

 

 

「スタッフがサポートする側として、安全面など大変な場面があるのは事実です。それでも、開かれた場所だからこそ、地域の人から『何をしてるの?』と声をかけられたり、ちょっとした立ち話をしたりできる。ボランティアや地域の人とも関わり合いを広げながら、らびっつという場所や、子どもたちのありのままの姿をもっと自然に知ってもらえたらうれしい。

今後はこうしたオープンな取り組みや、地域のさまざまな人たちとの繋がりを通じて、もっと『らびっつ』の子どもたちの姿を地域へ、社会へ広げていけたらうれしいです」

Contact

相談や質問を
したいときは

どんな施設で、どんなサポートが
あるのか、詳しく知りたい。
そんなときはご相談窓口に
お気軽にお問い合わせください。