スタジアムに掲げる、僕らの「ゆめ」と「みらい」

〜FC今治×きとなる フラッグ制作ワークショップ・レポート〜

春の柔らかな風が吹き抜けた4月6日。アシックス里山スタジアムの一角にある「きとなる」で、特別なワークショップが開催されました。

参加したのは、「らびっつ」の子どもたちと、「ジョブサポートセンターここすた」の利用者の皆さん。取り組んだのは、FC今治が進める『タッチウェーブフラッグプロジェクト』です。

スタジアムの増席工事に伴って設置された仮囲いを、市民一人ひとりの想いで彩り、地域に開かれたオープンギャラリーへと生まれ変わらせるこの取り組み。工事という“スタジアムの成長の時間”を、地域との新たなつながりが生まれる時間へ。そんなプロジェクトの一員に、きとなるの皆さんが加わりました。

 

🤝 支え合いながら、一緒につくる時間

フラッグづくりに使われたのは、本来なら役目を終えて廃棄される予定だった、のぼり旗やバナーの生地。再利用された素材に、一人ひとりの手形やメッセージを重ね、世界に一つだけの応援フラッグをつくっていきます。

「ハサミが苦手な子には厚紙の型を用意し、手形をなぞるのが難しい子にはスタッフが寄り添う。どの子も自分のペースで『やる気』になっていくプロセスを大切にしました」と語るのは、らびっつ職員の山本真由美さん。

最初は「何を作るんだろう?」と少し戸惑っていた子どもたちも、実際に材料に触れ、完成イメージを知るうちに、少しずつ表情が変わっていきました。気づけば真剣な眼差しで、夢中になって手を動かしています。

そんな活動の中で印象的だったのは、事業所を超えた自然な関わりでした。

「らびっつとここすたは隣同士にありますが、普段は活動時間が違うため、なかなか交流する機会がありません。だからこそ今回は、“人と関わること”そのものを大切にしたいと思いました」 (山本さん)

そんな思いを背景に、事前の試作段階から職員同士が情報交換を重ね、互いの「関わりしろ」を探っていきました。当日は「ここすた」の皆さんが子どもたちの制作をサポート。旗をしっかりと押さえたり、切りやすいように手を添えたりと、ひとつの作品を一緒につくる中で、自然と会話や笑顔が生まれていました。

 

🎨 フラッグに描いたそれぞれの思い

フラッグを目の前にして、「自分だけの表現」に熱がこもる子どもたち。「らびっつ」に通う「工作が大好き」な小学生の珠琳さんも、3枚、4枚と夢中になって筆を走らせました。

「将来こんな街になってほしいな、こんな国になってほしいな……」
彼女がフラッグに書いたのは、『暴力や犯罪のない、みんなが仲良しの平和な世界』です。

「みんなで話し合って解決すればいい。私の将来の夢は……大統領になって、世界中の喧嘩を止めること!」と、珠琳さんは語ります。

 

一見、壮大なテーマに見えますが、その言葉には、子どもらしいまっすぐさと、周囲の人を大切に思う優しさが詰まっていました。日頃から地域の人に自分から挨拶し、たくさんの人と関わることが大好きな珠琳さん。 彼女の「お友達リスト」は、今や1万人(!)に迫る勢いなんだとか。

「珠琳さんにとって、スタジアムってどんな場所?」

そう尋ねると、返ってきたのは「お友達が増える場所!」という元気な声。スタジアム周辺で出会う人たちとの何気ない交流が、彼女の視野を「自分」から「地域」、そして「世界」へと広げているようにも見えました。

 

🏟️ 地域の中で育つ、「できた」の積み重ね

通常、福祉施設は「守られた空間」として閉じがちですが、スタジアムに隣接する「きとなる」では、日々さまざまな人との出会いがあります。散歩中の方、工事関係者、スタジアムを訪れるサポーターの皆さん――そんな日常の中に、子どもたちにとって大切な学びの機会がたくさんあります。

「たとえばワンちゃんに会ったときも、いきなり触るのではなく、“まず挨拶して、いいですか?と聞いてみよう”という練習ができます。ここには、生きたコミュニケーションの場があるんです」と山本さん。

すれ違う人と、最初は恥ずかしくて挨拶できなかった子が、少しずつ自分から声をかけられるようになる。そんな小さな成長が、日々積み重なっています。

「ここで地域の人に声をかけてもらう経験は、子どもたちの心を確実に豊かにしています」(山本さん)

バッタを追いかけたり、蝶々を捕まえたり。そんな自然豊かな里山の景色と、挨拶や関わりあいを通じて自信を育む体験。そのどちらもが叶う環境こそ、「きとなる」の魅力だと山本さんは教えてくれました。

 

🚩 風に揺れる、未来へのメッセージ

完成したフラッグは、5月10日、スタジアムゴール南裏付近の仮囲い壁面に掲示されました。 そこに並ぶのは、色とりどりの手形と、自由な書きぶりで綴られた夢の数々。一つひとつのフラッグは小さくても、それが連なることで、工事現場の無機質な壁は「地域の体温」を感じさせる場所へと生まれ変わりました。

スタジアムを訪れた際は、ぜひ足を止めてみてください。そこには、色とりどりの明日を夢見る一人ひとりの、心温まる「みらい」が風に揺れています。

 

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